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期待と実感の早春

平野はソメイヨシノが開花し、モミジが芽吹き、冬はすでに終わっている。山では木々は葉を広げていない早春で、大した虫もいない。山の季節はまだ冬のようで、長い休みの続き。

里山くらいの標高のところにするか、まだ冬景色の山でフライを振るか。放流された魚を狙うか。ドライフライで釣りたいなら、ドライフライを食ってくれる魚を狙っての里山や放流魚だろう。冬の続きの山に入って、探索するのも捨てがたい。シーズンの始まりは、そのシーズンをどう釣るか想像が膨らむ。一方で、意気揚々と帰宅することは少ない。まだ季節が早いと実感する。

実感できてまあ良しということにしよう。虫だって大して飛んでいない。水面にも流れにくいから、魚も水面の虫は食べ慣れていない。流れの瀬には居なく、淵の巻き返しとか、流れが緩やかな場所で沈み石とかもある身を潜めやすい場所だろう。魚の体力も盛期より少ないないから、常にヒレを動かさなくてすむ場所で、物陰から苦労しないでエサを食べたいはず。

私はシーズンごとに水域や漁協を変えることが多いので、早春は熱心に魚を狙うというより、初めての水域の下見感覚で何カ所かを見て回る。そして、土地土地の景色を見て回るのも楽しい。昔からある街並みや家々は歴史を感じられる。人々が積み重ねてきたものを実感し、憧れる。

肝心の魚の方、小さめでやる気ある魚はドライフライも食ってきてくれる。早春はがっぷり食わず、針掛かりしにくいこともあり、ここぞという数少ない場所で釣れてくれると嬉しい。トロ場ではフライをしっかり判別してくるから、小さいくせに気が抜けない。シーズン最盛期はもっと釣れて一匹一匹は記憶に残りにくいけど、早春は一匹が実感と共に記憶に残る。