ISHII SATOSHI -Kawa no Maker- >> Fly Fishing >> column:初めてのキス
「フライフィッシング以外やらないの?」と、人に聞かれることがある。特にフライフィッシングをやらない人は、ルアーや餌釣り、海釣り等、その人にとってより身近にイメージする釣りを思い浮かべるのだろう。
ついフライが面白くて偏りがちだけど、他の釣りもやろうかと、海でシロギスを狙ってみた。海釣りは全国的に身近な釣りかもしれない。その地域の人は、男性に限らず女性もわりと見かける。
小中学生だったころ、釣竿とクーラーボックス、道具を詰めたバッグを肩にかけ、電車で1時間くらいの海釣りを楽しんだ。ハゼやセイゴが釣れ、持ち帰って食べた良い思い出だ。
釣りは長くやっているけど、今回は初めてのキス。フライフィッシングは餌にも注目して楽しむが、趣向をこらして砂地にいるらしいジャリメを現地採集してみようと、スコップも持ってきた。
これまでの海釣りの餌にはアオイソメを使ってきたが、キスにはジャリメがいいらしい。その生息場所は河口の砂地。海水と淡水が混じるところだそうで、現地の河口の砂浜を掘ってみる。けれど、ジャリメは出てこない。場所を移して掘ってみる。ジャリメが好む餌も考えてみる。
車で転々とし、砂はあるけど磯っぽい場所に来た。早速、有機物が混ざった黒い泥混じりの砂を掻き分けてみると、いた。ジャリメだ!思っていたよりも小さいが、たぶんこれがそうだろう。いつものアオイソメより小さく、キスの小さい口には丁度良さそうだ。とにかく、実物を見つけた体験に感動する。その後、もっと探すが見つからず、全部で3匹だった。生き物は他にもいて、たくさんのヨコエビを見つけた。より岸側には貝殻が積もっていて、高潮時は海面下になる場所なのだろう。生き物や養分が、海と川とを行ったり来たりで繋がっているのだと、環境に思いを巡らせた。
3匹のジャリメでは足りないから、釣具屋で追加した。釣る前に時間をかけてしまったけど、過程も楽しむことにする。
前回釣りに来た時に見つけた、シロギスに良さそうな場所に到着した。防波堤の手前では、透き通った海水ごしに砂地が見える。先客は一人。私も腰をおろし、安く手に入れた中古の投げ竿と、ティペットや何やらで仕掛けを作り始める。
フライとは勝手が違うもので、もたもたと仕掛けを作る。針の大きさはどのくらいが良いんだろう。天秤は持ってきたけど、重りが2.5号しかない。つい苦笑いするが、まあ何とかしよう。
「どう?何か釣れてますか?」と、地元のおじさんが見に来た。「まだ来たばっかりで、シロギスを釣りたいんですけど。海釣りの経験あまりなくてわかんないんですよね。」と答えると、そろそろシロギスにいい時期だよねと、安心の言葉をいただいた。もたもたと仕掛けを作っていくけど、「その針で何釣るの?」と、おじさんが言う。針が大きすぎるそうで、手持ちの針を見てもらう。
準備に手間が掛かるけど、釣りをしない人はどう思うんだろう。面倒と思うだろうか。針をどうしようか悩むのも楽しさではあるけれど。「じゃ、頑張ってね。」と言い、おじさんは歩いて行った。他の釣り人にも声を掛けているし、釣りが好きな人なんだろう。
仕掛けがやっとできた。針は2本。エサの付け方は、これでいいのかなと思いながら、あらかじめ調べてきたようにつけた。小さく切られたエサで、本来の形でなくて釣れるのかなと思いながら。
まずは軽く投げてみる。もう着底しただろうというところで、仕掛けを引っ張ってくる。リールで引くより、竿で引く。竿を戻しながら、リールに糸を巻き取る。どうするのが正解か分からないけど、高級なリールでもないし、竿で引く方が状態がわかる。こういう工夫は釣りの秘訣で、楽しい。底は砂地が続いているような感触で、シロギスには良さそうだ。防波堤の近くになると根に引っかかるようなので、その前にピックアップする。
なるべく遠くに投げようと、竿に力を乗せる。力を入れる時間と量を多くし、オモリに遠くに飛ぶ力を与える。フライキャスティングの経験も活きる。ロールキャストでバックに力を溜めるように、サイドからバックに移るところからも竿に溜めていき、十分な力でオーバーヘッドキャスト。
10回ぐらい投げただろうか、ブルブルっとアタリがくる。きっと魚だろうと、期待が高まる。針に掛かれよっとアワセ。魚掛かってるかなと、リールを巻いてくる。多少は重いけど、うーん、不安混じりに水面まで仕掛けを上げてくる。
おっシロギスだ?!狙った魚を釣った喜びを味わった。初めてキスを釣ったけど、鼻の長さが特徴的なかわいい顔だ。
それからしばらく、どこに投げたらいいのかなと、こっちに投げてもいないなーと、あの辺りにキスはいるみたいだぞと探りながら、キス釣りを楽しんだ。よく言われる、船の通り道の深くなってるところが良いのだろう。5匹ぐらい釣り、ひと時を楽しんだ。最後に大きめの立派なのも釣れたし、水面で外れてしまったカワハギや、針を伸ばして逃げた謎の魚にも心躍った。
シロギスの数やサイズを狙ったり、仕掛けやエサ、その他色々を工夫するのも面白そうだ。フライフィッシングとの違いも、共通点もあって、魚釣りはやっぱり面白い。初めてのキスでそんなことを感じた。
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